いい女だ。
 
あいつは自分の役割をわかっている。
豊満な身体で男たちの目を楽しませ、
酒を飲ませて至福のひと時を与える。
 
女とは何かとでも言うかのように大人の色香を放っている。
酒場の切盛りには力仕事もやってのけるのだろう、
ふくよかなだけでなく筋の通ったいい身体だ。
 
それでいて、誰の女にもならない。
近寄りがたい俺たちの女王。
他の酒場が荒れに荒れ、店主もろとも
「Closed」の看板をトビラにさげていく中、
ここの酒場は今日も営業を続けている。
 
それはここが俺たちの第二の家であり
第二の母親がいるからだ。
 
そんな女もたまに寂しげな顔を見せる。
普段は見せない、やけに女々しい表情だ。
 
センチな気分になっているとき、
「ロマンチックに見えるのはお前があの女に惚れてる
からだろう」
と、グラスに映った酔っ払いが茶化してきた。